[ 展覧会 ]

活版是字緒 かっぱんcollegio

関根ひかり

令和3年度 秋〜冬

未定

世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」のなかでも、活版印刷の歴史に深く関わる長崎市・島原市・天草市を中心としたフィールドワークを行なった。日本の活版印刷のはじまりの場所である長崎と天草地方を緒(いとぐち)とし、活版印刷の衰退とともに使われなくなった東京の鉛活字をもう一つの端緒に、1590年から2021年まで431年の時の流れをつなぐ作品が作りたいと考えた。 島原・天草一揆の主戦場となった原城跡からは、鉛の銃弾を溶かして鋳造した十字架が多数発掘されている。一方で、当時最も多くの活版印刷が行われていた天草コレジオの場所は明確にはわかっておらず「もし活字が一つでも発掘されれば、確かな証になるだろう」という現地の方の言葉が深く印象に残った。「文字を組み、言葉を伝えたい」という思いを象徴する鉛活字は、今も土の中に埋まっているかもしれない。 この夏、東京で使われなくなり廃棄されていた鉛活字を溶かして、 十字架を鋳造した。日本の活版印刷発祥の地に埋まる鉛活字を想像することは、言葉の力を信じた人々に思いを馳せることでもある。捨てられてしまった活字をもう一度信仰の象徴である十字架として蘇らせ、言葉への信仰を形にしたいと思った。作品は、秋から冬にかけて発表予定。