I LOVE YOU プロジェクトは、
現代社会において、芸術が担うべき新たな役目、
可能性を見つめるために立ち上がりました。
参加者は、東京藝術大学の学生と教職員。
「芸術は、人を愛する」という信念に基づき、
まずは2020年に、50以上ものインスタレーションや、
コンサート、ワークショップなどを行いました。
2021年には、「SDGs」をテーマとし、
アーティストたちが当事者として、社会課題に取り組み、
翌年の2022年は「誰もが孤立しない共生社会の実現」に向けて、
様々な問題の解決に芸術の力でアプローチを試みました。

そして、プロジェクトを開始して4度目となる2023年は、
本学が新たに創設した「芸術未来研究場」における共同研究企画として、
「アートDX」と「ケア&コミュニケーション」という2つのテーマに沿って、
教員・学生がそれぞれの方法により、アートの未来を切り開いていきます。

プロジェクトを立ち上げたきっかけは、ひとつの疑問でした。
近年、様々なテクノロジーが革新を遂げていますが、
もしかしたら、その一方で“人間らしさが損なわれていないか?”
疑問に感じたからです。

今ある仕事の8割がAIにかわられるともいいますが、
社会が無機質に進歩しては、残念ではないでしょうか?
せっかく人間には、様々な方法で、感情をわかち合うチカラがあるのですから。
新しいもの、古いもの、それに限らず様々なものの違いを認め合える社会を、
つくらなくてはならないのだと思います。

想像してみてください。
ものごとの本質を見極め、声なき声に耳を傾けられる世の中を。
目を背けがちな難題をひも解き、仲間と手をとり立ち向える明日を。

私は、芸術には、ひとの心を動かし、
社会を豊かにするチカラがあると信じています。
そして、芸術には、その使命があると考えています。

日比野克彦 photo by Nozomu Toyoshima

東京藝術大学 学長
東京藝大「I LOVE YOU」プロジェクト
CGO(チーフ芸術オフィサー)

日比野克彦